某所にもとめられて書いた、約500文字の書評。 俺が単一の書籍について語ることは少なく、公開するのもまた乙なものだと思った。この詩集は俺の人生においてもマスターピースといえる重要なものなので、ひとりでも手にとってみてくださる方がいることを願う。以下、原文ママ。

- 作者: ゲーリースナイダー,Gary Snyder,山里勝己,原成吉
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 2002/01
- メディア: 単行本
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人生を歩むなかで、それぞれの節目に必要に迫られて取り組んできたライフワークや様々な問題意識が、実は1本の線で繋がっていると感じることがよくあります。私の場合、古代中国の自然観や老荘思想、陰陽五行を生活実践の場で活用しているので、生起する物事ひとつひとつに必然性があって、起こるべくして起きているような感覚をよく体感します。
そうした自分のなかの心象風景が、『終わりなき山河』の詩の世界観と重なるのは当然のこととして、スナイダーのヴィジョンにもあきらかに生きとし生けるもの、地球がつくりだしたすべてのものは有機的に結びついていて、地球というフィールド自体が悠久の時間の流れから生まれた、一つの叙事詩であるという観念を強く感じさせられます。
自然の厳しさ、雄大さを前にした人間の営みのちっぽけさ。飽くなき欲望に突き動かされ“付加”し続けることで発展する人間社会に対して、“引く”ことで見えてくる豊かな精神と自然の姿。簡素な言葉で大きな世界を視覚化する、見事な詩のダイナミズムに気付かされた1冊です。